残業代請求の理論と実践

弁護士渡辺輝人のブログ。残業代(労働時間規制)にまつわる法律理論のメモ、裁判例のメモ、収集した情報のメモ等に使います。

資料:割増賃金制度の意義自体に消極的な研究者の発言

荒木尚志『労働法 第2版』(2013年5月30日 有斐閣)153~154頁

しかし、現行制度では、割増賃金の計算基礎となる賃金から、前述のように各種手当、ボーナス等が除外されている。日本の場合、ボーナス等の年収に占める割合が高いため、現状の割増賃金制度では経済的コストによる時間外労働抑制の効果はあまり期待できないこととなる。

朝倉むつ子「労働時間法制のあり方を考える~生活者の視点から」(『自由と正義』2016年2月号41頁以下。該当部分は47頁)

労働時間短縮の手法は、実は、労基法の中にすでに存在している。労働組合が本気で時短に取り組むのであれば、36協定を通じて時間外労働を拒否することは可能であり、上弦時間もコントロールできるはずだからである。しかし、労働組合はその手法を使わず、むしろ一定の時間外労働手当の獲得を目指してきたし、個々の労働者も、労働時間より賃金に関心を示す傾向があった。このように、割増賃金を支払わせることを通じて時間外・長時間労働を抑制するという現行の手法は、率直に言ってリアリティに欠けるものでしかない。