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残業代請求の理論と実践

弁護士渡辺輝人のブログ。残業代(労働時間規制)にまつわる法律理論のメモ、裁判例のメモ、収集した情報のメモ等に使います。

残業(時間外労働)となる時間帯の計算方法【働くあなたのための残業代計算1】

 みんなが知っているようで知らない残業代の計算方法を、何回かに分けて、紹介したい。初回は、残業時間の計算方法。以下は、労基法の大原則である週40時間制・一日8時間労働制の場合。図は日曜日~土曜日まで、毎日、記載した時間数を働いた場合を表している。

一日8時間超の残業

 まず、一日8時間超の労働時間は法定時間外労働(以下「時間外労働」)となる。計算方法は

一日8時間超時間外労働時間=一日の労働時間-8時間

である。図の赤い部分がそれに該当する。これは大概誰でも知っている。実務的に重要なのは24時を超えて働く場合は二つの日にまたがっていても、一連の労働が終了するまで「一日」とされる点。まあ、これも誰でも直感的に分かっているが。

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週40時間超の残業

 一方、週40時間超の残業になると、一気にマイナーな話題となる。

 計算方法は、法定休日(図の薄紫)を除く週の労働時間のうち、一日8時間以内の分を累積(図の黄色)していって40時間を超えた分(図の青色)である。以下詳しく説明する。

 まず、一週間の起点は、日曜日にする、と厚生労働省が決めている。(就業規則で特別な決まりがある場合除く。ほとんどない。)

 所定労働時間は、必ず、一日8時間以内でなければならない。(変形労働時間制の場合除く)

 図では会社の一日の所定労働時間が7時間30分、週5日労働制の事例を想定しているが、法定休日とした日曜日(第1曜日)を除くと、月曜日(第2曜日)から金曜日(第6曜日)までの一日8時間以内の所定労働時間(黄色)+法内残業(オレンジ)の部分を累積すると7.5×5+1.0=38.5時間となる。土曜日(第7曜日)は所定労働日でもなく、法定休日でもない「法定外休日」となるが、この日の残業のうち、40時間超かつ一日8時間以内の分、すなわち6.5時間が週40時間超の残業時間となるのである。一日8時間労働制なら8時間×5日で40時間となるので土曜日(第7曜日)の8時間以下の労働時間はすべて週40時間超の労働時間となる。

 実は、労働者が数十人いるような会社でも、週40時間超の残業代を支払っている例はあまりお目にかからない。給与計算ソフトがそもそも計算に対応していなかったりする。

法内残業

 図は一日7.5時間労働、週5日労働制なので、一日7.5時間超かつ8時間以内の部分と、法定外休日(土曜日)かつ一日8時間超でも週40時間超でもない分の労働時間は「法内残業」となる(図のオレンジ)。法定外休日(土曜日)の労働も法内残業の一種だが、言葉として別に扱われることも多い。

 法内残業については、原則として100%分(25%の割増がない)残業代が支払われるが、就業規則で、125%の割増率が定められている場合も多い。法定外休日の場合、法定休日並みに135%の割増率が定められている場合もある。

法定休日の残業

 法定休日は週に一回定められていて、基本的には定まった曜日である(実際には頻繁に振替がされる例があるが)。法定休日の振替は、日曜日から始まる同じ週の中で行わなければならないので、次の週に法定休日を飛ばされるような場合は、翌週の休みは休みであり、本来の休日は法定休日労働となる。法定休日と法定外休日は、見かけでは区別がつかない。就業規則で定められることもほとんどないので、慣行で見ていくしかない(労働者が残業代請求するときは一番安定してそうな休日の曜日を法定休日の曜日とすれば間違いない)。

 法定休日の概念は0時-24時のゾーンを指す。法定休日が日曜日の場合、土曜日の労働が24時を超えると、その先は法定休日労働となり、逆に、日曜日の労働が24時を超えると法定休日労働ではなくなる。

 法定休日の労働時間は、一日8時間超、週40時間超の労働時間の計算には入れないので、注意が必要。

小括

 まとめると、

  • 週40時間超の残業時間は一日8時間以下の労働時間の累積で週40時間を超えた分
  • 法定休日労働時間は8時間・40時間の計算に入れない

となる。以前、労基署の職員に聞いたところでは、タテの規制(一日8時間)とヨコの規制(週40時間)からはみ出た分が法定時間外労働(残業)となる、と考えるそうである。この考え方から分かるように、8時間超の残業と40時間超の残業が重複して残業代の割増率が150%になったり、ということは、ない。

面倒なら「給与第一」を使って欲しい

 私が開発したエクセル「給与第一」は、日々の始業時刻・終業時刻・休憩時間等を記入すれば、上述の計算は全自動で行う。労働者なら誰でも完全に無料で使用できる。実際に残業代を請求したくなったら、そういうものを使用することも検討して欲しい。

 次回は、もっとみんな知らない残業代の一時間当たりの単価(基礎時給)について。多くの会社では過小計算されている。